6/15 数学・間違いだらけの暗算 | 勉強もたまには教える数学塾

6/15 数学・間違いだらけの暗算


今回は、「二つのタスクを暗算で同時におこなうべからず」というおはなし。

「二つのタスクを同時におこなう」 とはどういうことかというと、たとえば、「符号(+-)を変える、というタスク」をおこないながら、同時に「式を展開する(カッコを外す)というタスク」をおこなう、ということである。

小生は数学教師のくせに暗算が不得手なので、なるべく筆算または電卓算(?)をするのであるが、小生の塾(ブログタイトルの「勉強を教えない通信教育受験塾」ではなくて、実在している学習塾)には暗算がお好きな生徒さんが多くて、上記のごとく、二つのタスクを同時に暗算でおこなっているシーンが多々見うけられる。

暗算がお好きな理由は、たぶん、時間と紙とシャーペンの芯を節約したいためであろう、と拝察申しあげている。

そして、暗算の結果、お間違えあそばす場合がひじょうに多い。

お間違えあそばすケースの筆頭二つをご紹介しよう。

【ケース1】
前記した「符号(+-)を変えること」と「式を展開する(カッコを外す)こと」とを暗算で同時におこなってしまうケース。

実例をお見せしよう。

[問題1]
 a-(a+6)(b-16) を展開して簡単にせよ。

[解答例1A]
(符号を変えるタスクと 式を展開するタスクとを暗算で同時におこなっている悪い解答例で、赤い部分がマチガイ)
 a-(a+6)(b-19)
 =a-ab+19a-6b-114
 =-ab+20a-6b-114

[解答例1B]
(符号を変えるタスクと 式を展開するタスクとを別々に紙に書いておこなうおススメ解答例。 はじめに式の展開だけをおこない、カッコでくくっておき、つぎにそのカッコを外す、すなわち符号を変える、という方法。)
 a-(a+6)(b-19)
 =a-(ab-19a+6b-114)
 =a-ab+19a-6b+114
 =-ab+20a-6b+114

おススメ[解答例1B]は暗算[解答例1A]より1行多くなるが、ミスを犯す可能性はずっと小さくなる。

【ケース2】
分数の割り算で、「割る方の分数(÷のうしろ)を逆数にして掛け算に変換するタスク」と「掛け算計算タスク」とを同時におこなってしまうケース。

[問題2]
 2/3 ÷ 5/7 × 11/13 ÷ 14/15 を計算せよ。
 (少々見にくいが、「2分の1」を「1/2」と表記させていただく。)

[解答例2A]
(割る方の分数を逆数にすること と掛け算計算とを同時におこなっていて、ミスを誘発しやすい解答例で、赤い部分がNG)
 2/3 ÷ 5/7 × 11/13 ÷ 14/15
 = 14×154/15×195
 (11×15とすべきを11×14=154、13×14とすべきを13×15=195
  と間違えている)

 = 2156/2925

[解答例2B]
(まず逆数にすることだけを紙に書いておこない、つぎに掛け算計算(この問題では約分だけ)をおこなう、ミスをしにくいおススメ解答例)
 2/3 ÷ 5/7 × 11/13 ÷ 14/15
 = 2/3 × 7/5 × 11/13 × 15/14
 = 1/1 × 1/1 × 11/13 × 1/1 (約分の結果)
 = 11/13

この場合も前問のときと同様、おススメ解答例の方が1行多くなるが、ミスを犯す可能性が小さくなることは言うまでもない。

クルマを運転中のケータイ電話使用が法的に禁止されたことでお分かりいただけるように、人間、二つのことを同時におこなうとミスを犯しやすいのだ。

試験のときも自然におススメ解答例1B & 2B のようにやれるように、普段からタスクを分け、それを紙にお書きになることをおススメ申しあげる。

暗算解答例にくらべて1行ふえるが、頭の中でごちゃごちゃ考える必要がなくなるので、時間的にはたいして違わないのだ。
紙とシャーペンの芯は、残念ながら節約できないが、ミスを減らすための安価で有意義な投資とお考えいただければ幸いである。


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